超音波とは

周波数が20kHz以上の音波であり、ヒトの耳には聞こえない音である。
超音波は気体、液体、個体を伝導する。速度は気体では、最も遅くて340m/秒、液体では、1,000~2,000m/秒であり、減衰の程度も少ない。水での伝導速度は、1,500m/秒前後であり、筋、腱では1,550m/秒前後であると報告されている。

超音波療法の分類

温熱的超音波療法

温熱効果を得る為には、超音波を連続波として使用する。温熱効果が得られやすい組織は、腱、靭帯、筋膜、筋、腱である。
周波数の違いによって深達度に違いがあるので、治療対象組織がどの程度深部にあるかを推察して周波数を選択する事が重要である。

非温熱的超音波療法

温熱効果を加えずに超音波の非温熱的効果のみを期待した治療である。
代表的な非温熱的超音波療法として骨癒合促進の為の治療があるが、最近では新鮮骨折に対しても実施している。この場合、早期に実施した方が早く治癒するとの報告が多い。また、筋断裂後や腱断裂後の急性期に、低強度の超音波療法を実施すると、早く修復したり、腱の粘弾性が改善するという報告もある。

超音波療法の目的

・血行を良くする・筋肉の拘縮、硬結の緩和(筋肉を緩める)・腱、靭帯の伸展性を上げる・急性期の浮腫の軽減

超音波療法の生理学的効果

①筋代謝の促進

超音波照射による酸素消費量の変化を調べた研究がある。この研究によると、酸素消費量は1.38倍程度増加している。酸素消費量が増加しているということは、ATP(アデノシン3リン酸:身体を動かしたり、細胞分裂をする為のエネルギー)産生量も増加したということである。ATP産生量の増加により骨格筋の障害部位の治癒促進が期待できる。

②温熱効果

下腿三頭筋に対して超音波照射による温度変化を調べた研究がある。1MHz、2.0W/㎠、10分間の照射で2.5cmの深度では4.0℃温度上昇が起こり、5.0㎝の深度では3.5℃の温度上昇が起こった。また、3MHz、1.0W/㎠の照射で0.8㎝、1.6㎝の深部の双方で6.0℃の温度上昇が起こった。

③ミクロマッサージ効果(音圧効果)

ミクロマッサージ効果はキャビテーションとマイクロストリーミング、音響流の組み合わせで起きる効果のことです。

・キャビテーションとは

キャビテーションとは、液体中で圧力が減少することによって空孔のできる現象です。

・マイクロストリーミング、音響流とは

超音波照射によって、振動する気泡が発生し、この周りで起こる局所的な渦巻き流のことをマイクロストリーミングという。
音響流とは、超音波によって起こる一定方向への細胞液の流れをいう。

超音波療法の適応例

・外側上顆炎(テニス肘)・内側上顆炎(野球肘)・腱鞘炎・弾発指・関節水腫・アキレス腱周囲炎・足関節捻挫・肩こり・五十肩(凍結肩)・急性腰痛・慢性腰痛・椎間板ヘルニア・坐骨神経痛・脊柱管狭窄症

参考

物理療法テキスト 南江堂
超音波治療器の緩衝材置換による生体への作用の変化、及びその生体反応機序  佐藤勇治
超音波療法は骨格筋の酸素消費量を増加させる     白石 聖